sleep like a log

新聞のコラムや社説をながめてみる

容貌をあげつらう

「容貌をあげつらう番組に異議あり」という投書が先日、朝日新聞(東京版)に載った。投書者は高齢の既婚者で北欧在住という。…… 「……男性が相手の容姿について『きれいな方ですね』とすぐ口にする。女性アナウンサーもあいづちを打つ。テレビでこの種の発言…

今は漕ぎ出でな

「ハロウィーンどうするの?」と聞かれ、「カボチャでも食べようかな」と答えたら「冬至かよ」って突っ込まれました。 万葉集に「熟田津(にきたつ)に船乗りせむと月待てば 潮もかなひぬ今は漕(こ)ぎ出(い)でな」の一首がある。高校生に絵にかかせたら…

地面師

意味が分からなかった人も多いのではないか。「地面師」が久々にニュースに登場した。広辞苑には「自分に所有権のない土地を勝手に売り飛ばす詐欺師」と説明がある。 地面師の一団が積水ハウスに架空の土地取引を持ちかけ55億円をだまし取ったとされる。偽造…

さんまの味とすだち

題名に使われているのに、その魚が本編に登場しない映画がある。小津安二郎監督の「秋刀魚の味」だ。妻を亡くした初老の男を笠智衆さんが演じる。娘が結婚して家を出る寂しさ、忍び寄る老いの不安…。ありふれた日常の中で揺れる心を淡々と描いた名作だが、予…

8月6日の朝

8月6日の朝、屋外作業をしていた広島二中の1年生たちの頭上で原爆はさく裂した。……同じ1年生に竹田雅郎くんがいた。神戸に住む弟の雅博さんに話をうかがったことがある。焼け野原を探しまわって、父がやっと見つけだしたのは黒焦げの弁当箱。まわりの砂…

西日本豪雨

「雨禁獄(あめきんごく)」とは雨を獄に閉じ込めることで、白河法皇の故事に由来する。ひどい雨のせいで自分の行幸を何度も延期せざるを得なくなった法皇は腹を立てて、降る雨を器の中に入れ、それを監獄に置いて罰したと、源顕兼の「古事談」にある。…… 出…

インバウンドと受動喫煙防止条例

「インバウンド」という英語を耳にするようになって5~6年たつだろうか。外国人誘客、訪日外国人客といった意味で、言葉として市民権を獲得しつつある。 政府は、訪日外国人観光客数の目標を2020年に4千万人としている。昨年度は約3千万人に達し、東京五…

140字のツイッター

ものを考え、書く力を付けるためには「ツイッターを140字以内ではなく、140字以上でないと送信できなくすればいいんじゃないか」と言った人がいる。 カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞した「万引き家族」の是枝裕和監督だ。朝日新聞の取材に対する…

月曜日の朝

<月曜日の朝のようにロマンチックではない>。そんな英語の言い回しがある。英国の作家C. ブロンテの小説の一節だ。現実の煩わしさを最も感じるもの憂い時。しかし、昨日の朝ばかりは寝不足が重なっても、なかなかの幸福感を覚えた人が、多かったのではな…

大阪の地震

大阪府北部を震源地とする震度6弱の地震が発生した。約13キロと浅い地下で起きた直下型で、地震の規模はマグニチュード(M)6.1と推定される。京都で震度5強、滋賀は5弱だった。…… 地震の巣の上に人口密集地が広がる――。そんな地震列島・日本の現実を改め…

デジタルとアナログ

先日、会社の後輩から、大切な紙の資料を電子文書化していないことを不思議がられた。そうすれば効率的に保存できると言いたいらしい。アナログ世代は、ITやらSNSやらAIやら、もうついていけない。 デジタルが暮らしで幅を利かせる中、人生の先輩たちの地道…

買い物弱者

たやすく使うのがためらわれる言葉がある。例えば「帰宅難民」と言うときの「難民」。「災害弱者」と言うときの「弱者」。どことなく哀れむような感じが漂う。ただ、字面をじっと見ていると「難問だな」「弱ったな」とつぶやきが聞こえてきそうで、様子を言…

ネッシー

英北部スコットランドのネス湖には、怪獣ネッシーが生息するとの伝説がある。水面から長い首を出す恐竜のような姿をとらえた有名な写真は、後に捏造と分かる。しかし、目撃情報は多彩で、伝説は今も多くの人の関心を引き付ける。 国際的な研究チームが新たな…

手紙

文豪、夏目漱石が大の手紙好きだったことはつとに有名である。門下生に宛てて「小生は人に手紙をかく事と人から手紙をもらう事が大すき」と記したほどである。 残された書簡類は優に2500通を超えるという。……漱石が二人の学友に送ったはがき3通の原本が福井…

誰かの靴を履いてみる

英国在住のライター・ブレイディみかこさんの息子さんが通う公立学校で、期末試験にこんな問題が出た。「エンパシーとは何か」。息子さんの答えは「自分で誰かの靴を履いてみること」。他人の立場に立ってみるという意味がある英語の定型表現という。 「エン…

あこがれの名刺

整理整頓は苦手だが、名刺交換した相手の名刺をファイルなどにしまう前に、面会した年月日を必ず記入するようにしている。後日、いつ会った人だったかを確認できるからだ。これは上司や先輩から教えられたのではない。取材先の役所の職員らがそうしているの…

ミョウガ伝説

お釈迦様の弟子だからといってみんな賢い人ばかりとは限らなかった。チューラ・パンタカ(周利槃特)はお釈迦様から教えられたことを片っ端から忘れてしまう人物だった。 悟りを開くことができた周利槃特が亡くなり、その遺骸を土に埋めると、そこからいい香…

墓石に刻まれた名前

脚本家の向田邦子さんは、作中の人物を何と名付けるか迷うと、墓石に刻まれた名前を探して、墓地を歩きまわった。そうして生まれたのが主人公「寺内貫太郎」だったという。演出の久世光彦さんが晩年の随筆に書いている。…… 出典:中日春秋:中日春秋(朝刊コ…

議会における子連れ出席

米上院は先週、1歳未満児の入場を認める規則改正案を全会一致で可決した。……日本では昨年、熊本市の女性市議が乳児を連れて入り、厳重注意された。市議会はその後、事実上、子連れ出席を認めない規則改正をしている。米国とは何とも対照的だ。 熊本市議の行…

文机

「書くより大事なのは机の前に座ること」。98歳で亡くなる晩年まで書き続けた作家の宇野千代さんはものを書く秘訣をこう語った。…… ちなみに夏目漱石の文机は“木のダイヤモンド”と呼ばれる紫檀。磨き込んで飴色の深い光沢と艶を楽しんだ。谷崎潤一郎は吉川英…

藤原定家の日記

大歌人、藤原定家の日記はいつも天候の記述で始まる。1180年から半世紀以上も一貫した習慣だ。有名なのは「天晴る。明月片雲なし」。 のちに日記が「明月記」と呼ばれるようになった由来である。好日だったのだろうと想像したくなるが、実は事件が起きていた…

あるじ不在の家

あるじ不在の家は人がやたら立ち入り、キツネやフクロウもすみつく。鎌倉時代の末期、吉田兼好はそんな身近な例を挙げて説いた。〈虚空〉には何でも物が入る。われわれに雑念が勝手に入ってくるのも心に主人がいないからだ、と。…… 社会学者マックス・ウェー…

自分の顔なんか見てられない

イラク日報のバグダッド日誌が面白いと聞いたので、読んでみたいなと思っているきょうこの頃です。 むかし鏡を手に取り、つくづく顔をながめた僧がいた。映ったあさましさに思わずおののいた。内面のいやしさを垣間見てしまったのだろうか。以来、鏡を恐れる…

あなたがここにいてほしい

母校が大阪桐蔭から2点を取って(14点を取られたが)ちょっと浮かれている春の1日。21世紀枠っていいな~と思いました。桜もすっかり見頃です。サボってお花見に行きたい。 心からここに今いてほしいあなたがいない。そんな痛みを歌った『あなたがここにい…

枕元に畳んだ服

7時間睡眠じゃ足りないわ…。眠くて気絶しそう。 アニメ「サザエさん」のカツオ君とワカメちゃんは就寝時、枕元に畳んだ服を置く。…… 「基本的な生活習慣が、いざというときに命を守ります」。道教大札幌校教授で防災教育の第一人者、佐々木貴子さん(家庭科…

地域社会の浄化

法務省が「犯罪者」「地域社会の浄化」などの表現があった保護司への感謝状の文面を見直す。 夫は「浄化」ではなく、愛に満ちた温かい地域社会を目指していた――きっかけは、亡き夫に届いた感謝状の冷たい文言に違和感を覚えた妻の全国紙への投稿。47年続いた…

副業・兼業の推進

働き方改革の一環として、政府は副業や兼業を推進する。自由な働き方を広げることになろう。しかし、雇う側のしっかりとした労務管理がなされなければ過重な労働が生じる懸念がある。…… 副業や兼業のメリットについて、厚労省はスキルアップや所得増加などを…

微かなもの

大昔のアラビアなどでは夜空の星が兵士の視力検査に用いられたという。良いか悪いかの目安になったのは北斗七星のひとつミザールにくっついたように見えるアルコルだ。 「微かなもの」を意味するアラビア語に星の名が由来するという(異説あり)。…… 出所:…

潜水服を開ける鍵

ある日突然、脳出血で倒れたフランスの男性の手記を読んだ。題名は『潜水服は蝶の夢を見る』。男性が病室で目覚めると、意識と記憶は元のままなのに頭のてっぺんからつま先までまひしていた。 重たい潜水服に閉じ込められたような絶望感の中で、かろうじて動…

貧困が怒りの声さえ奪う

国内の2千万人が貧困ライン以下の暮らしだという。6人に1人が当てはまる。…… 週40時間働いて祝日も働くが、最低賃金では病院にも行けないと20代の女性が打ち明ける。高校、大学を出るために借りた奨学金も負っている。30年間返し続ける。その女性は「ちょ…