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新聞のコラムや社説をながめてみる

海と毒薬

 『海と毒薬』を読まれたことはありますか。

 私は遠藤周作が好きで、いくつか本棚においています。一番好きな『死海のほとり』、晩年の作品で完成度の高い『深い河』、そして、『海と毒薬』も。

 

 ……1945年5月、九州を爆撃した米軍のB29が迎撃を受けて墜落し、搭乗員9人が捕虜となった。軍部は情報収集のため機長を東京に移し、他の8人は裁判もせずに処刑を決定。「戦時の医学に役立てる」ため、同大〔九州帝大〕医学部に送られた。

 治療や診察を受けられると思った捕虜は「サンキュー」と喜んだという。待っていたのは医師の倫理を踏み外した生体実験。片肺を切除して人はどれだけ生きられるか、血液の代わりに海水を入れればどうなるか-。8人は非人道的な解剖手術の犠牲となった。

 ……資料が同市〔福岡市〕・天神のアクロス福岡で展示されている。7月3日まで。無料。人の心を狂わせる戦争の恐ろしさを、資料は静かに物語る。

西日本新聞:コラム2016年6月30日。〔 〕内は引用者補足〕

 

  遠藤周作の作品にはキリスト教というテーマが底流にありますが、けっして啓蒙的な内容ではなく、日本人とキリスト教の相容れない性質に葛藤するものです。信仰のない(あるいは、ないとされている)われわれが読んでも、共感するところの多いものだと思います。過不足のない、非常に心理描写・風景描写のうまい人で、言葉にできない感情を表現するのに長けています。

 

思い出したくはないが、忘れてはならない… - 西日本新聞

 

海と毒薬 角川文庫 緑 245-1

海と毒薬 角川文庫 緑 245-1

 

腕は確かだが、無愛想で一風変わった中年の町医者、勝呂。彼には、大学病院時代の忌わしい過去があった。第二次大戦時、戦慄的な非人道的行為を犯した日本人。その罪責を根源的に問う、不朽の名作。〔KADOKAWA・HPより〕